真紅の鱗が落ちている。
ゆいが気を失っている。
音が聞こえない。
町の残骸すらない。
人々がいない。
龍族もいない。
私は何をしてしまったのだろうか。何も無いその空間をしばらく見つめていた。
「…クロウっ!!」
必死に現実へ意識を戻す。おぼつかない足取りで愛しいクロウを翼で抱き寄せた。
クロウの脚はちぎれていてかなりの出血だった。
(もう助からないかもしれない)
そう思ったがクロウが言っていたことを思い出した。
「「純白の龍族の血液には医療にも特化しているんだよ!あらゆる怪我や病気を治せるっていう言い伝えがあるんだ。もし俺が怪我したら1滴分けてくれると嬉しいなぁ」」
私は1枚の鱗を剥ぎ取った。ぶつりッという音と共に赤い液体が滴る。その液体を上手くクロウの口へと運んだ。しばらく待ってみたが反応は感じられない。
「どうして?!どうして治らないの?!クロウ!言い伝えはどうしたの?詳しくもっと聞かせてよお!!」
私の声も虚しく空へこだまするだけであった。