美しく整った顔立ちには見覚えがあった。だが何か違う。とにかく小さい。
「がおがおうるせぇよさっきからお前」
えっと…がおがおってなんでしょうか。エメラルドグリーンの瞳を持つ男の子はあの日、2人の喧嘩を止められないどころかバンパーで頭を怪我した時に抱き寄せてきた子ではないか。王子様のような人だったと思っていたがこんな性格だったのかと少しガッカリした。というのは秘密。
「がおがおってどういうこと?喋れてるでしょ」
と少年に反論したが
「だから何言ってるか分からないよ龍族さん」
と返ってきた。
龍族?そうか、この世界は私がいた世界とはまったく別の世界なのか。私の姿にも驚かず、しかも私を龍族といういわゆる部族で割り切っている。それになんだかこの子の格好も奇妙だ。ハロウィンのコスプレイヤーに近い魔女のような見た目。長いローブに身を包み、本を片手に杖を持っている。正直、秋葉原に居るぞ。
「腹減ったのか?」
男の子は首を傾げて私の左目を覗き込んだ。
「うーん、ちょっとだけ」
「…やっぱりなんて言ってるか分からん」
んじゃ聞くな小僧。