「…寒い……」
酷く身体が重いし、頭も痛くて…というかインフルエンザの症状と言った方がわかりやすいかな。
左手を動かしてみる。
ーーぴちゃんーー
これは水かな。鳥のさえずりが聞こえる。森のざわめきが聞こえる。
「ん?鳥?ざわめき?!」
我に返った私は重い体を持ち上げて瞼を開く。そこには雄大に広がる森林と湖、柔らかな風が届ける金木犀の香りに似た甘い匂いと踊る草花が目に映った。
「どこだ…ここ」
びしょ濡れの私はとりあえず陸に上がろうと右手を伸ばす。しかし、伸ばしたはずの自分の手は白く硬い鱗で覆われ、指は三本、長い爪。変わり果てていた。
「…うわああああああ!」
パニックになった私は左手、お腹、背中、足を舐め回すように見たが右手と同様、全て純白の鱗で白い大きな翼を持った龍になっていた。
「あ…あ…ああああ!」
これは夢だ。夢に違いない。よくある事じゃないか。こんなこと。この間は龍と一緒に空を飛んで…
「ん?龍?!」
思い出した。この間夢に出てきた龍と同じ見た目ではないか。湖の水面に自分の姿を映す。
「…まるで…あの時の…」