丁寧に駐車した後、ゆいはシートベルトを解いて「はぁ…」とため息をつく。
「あいつは昔から性格悪かったんだよ。」
確かに私は昔からのめいを知らない。実を言うとゆいとめいに出会ったのはごく最近の事だった。私がVALONで働き始める前から2人は一緒にいて、協力しながら仕事をしていたらしい。だが、ゆいの成果を横取りしたり罪を被せたりと好き放題だったそうだ。それをいつも許していたという。
「もう潮時だと思うんだ、あたし」
「…それって」
初めての喧嘩だった。しかもその引き金が自分だと思うと心が痛む。
「昔はそうだったかもしれないけど今は変わったんじゃないかな。手が切れたのも何かの誤解だよ。」
説得も虚しくゆいは言い放つ。
「この間店長からLINEが来たんだよね」
そう言いながらポケットに入っている黒いスマートフォンを取り出す。チャットアプリを開くと「VALON 店長」の個別チャットを見せてきた。
「この話を貰ってからもう信じられなくなったよ」
私は右手の痣から鱗が出たけれど目からも鱗が出そうだった。