存在自体が芸術だった。朝日からのスポットライトを反射させ、眩い光を放っている。地響きがするような声が脳内から聞こえた。この声はおそらくこの龍からのものだろう。
「飛びたいか」
私は声を出さなかった。いや、出せなかった。自分の想像を遥かに超える超生物が目の前にいるのだから声も出なくて当然だ。私は首を縦に勢いよく振った。すると、龍は私の後ろに周り両足の隙間に長く、だが太く逞しいその首を入れてきた。
「行くぞ」
その瞬間、右手の痣が痛んだ。
「う…い、いたい…。」
カッターナイフで何度も強く刺されては引き抜かれてを繰り返しているようだ。痛い。ものすごく痛い。
大きく翼を上空で広げたその龍は上下に風を操りながら翼を動かし、朝日を目掛けて飛んだ。
ビュオンと風を鳴らしながら飛ぶ景色はさぞ美しかっただろうな。右手の痛みから前を見ることが出来ない。
「痛い、痛い!!」
右手の痣を左手で強く抑え込むが痛みは変わることなく続いている。両手を離した龍の胴体から景色が180度変わり真っ逆さまに大地へと引き寄せられる。
「あああ…」
その直後に私の意識は途絶えた。