その世界では魔族と龍族という2つの種族が共に暮らしていた。魔族は魔法を使い、より多くの魔力が使える者は超級魔道士として龍族と契約ができ、魔族によって色々な善悪を龍族が行ってきた。魔族にも龍族にも種類がある。魔族はローブの色、龍族は見た目だ。
龍族との出会いは様々でひとつひとつに物語があり、語りきれない程の感動を呼び起こす。
私がこれから話す物語はそんな沢山ある出会いの中でも特別なお話…。


よく私は小さい頃からはっきりと夢を覚えていた。
いちばん古い夢で覚えているのは…そうそう幼稚園生の時かな?聞いた事のない話や行ったことのない場所の話をしてお母さんを驚かせたっけな。
科学ではレム睡眠とノンレム睡眠の解析がされていて眠りが浅いと夢を見るらしい。…どうだろう?それじゃあ私は毎日よく眠れていないことになる。
「ねぇ、お母さん」
私は唐突にいつもお母さんに話し出す。
「なぁに、りんちゃん」
朝ごはんを作る母はいつも穏やかだった。
「お家の近くに大きな川があってね、そこでおじいさんが溺れちゃったの。そしたらお父さんがね、助けたんだよ。」
「…お父さんから聞いたの?」
少し間が空いて母が返事をする。
「違うよ!夢を見たの!」
「夢?」
グツグツと沸騰する鍋にいちょう切りにした人参や大根、その他の野菜を入れながら聞いてきた。
「そうだよ。お父さんはみんなから褒められていっぱいいっぱい笑ってたよ。」
ほのかに味噌の良い香りと上がったばかりの雨の匂いがそっと私の鼻をくすぐる。