眠たい授業が終わり各々部活に勤しむ夕暮れ時の静かな教室そこに佇む男女

告白が始まるのかなんて実況を添えたいが
そんな淡く儚いものを口にはしなかった

「時給1000円で私の家族にならないか」

「…は?」

瞬きを数回してカバンを床に落とす彼
中原雪の目は哀れみを孕んで死んでいる

「施設の門限でバイトも出来ないと嘆いていたじゃないか」

「いやまぁたしかに言ったけど俺は別に興味ねぇよ、そもそも俺とお前はダチだろうが」

「友達兼任でも私は大丈夫だ、ぜひ家族にならないか」

青い血管が頭に浮かぶのが見えた

「お前さ」

顔が青ざめる。
(あ、やばい)と思う頃には
私には底知れない地雷を踏み抜いた感覚があった

理由は家族
雪は施設にいるその理由は明白で雪には親がいない。
その事を笑って話してくれるけれどその反面
縛られて生きる彼がとても
息苦しそうに死んでしまうのではないかと思ってしまった

「私のわがままなんだ、誰にも言ってないが私にも家族がいない似た者同士だろ」

ゴクリと言葉を飲んだ音がした
こんなこと言うんじゃなかったと頬を書くと

「たまに寂しいのか寒いのかわからねえ時が有るそれをお前なら埋めれるのか」

芯の通った声で切なそうに笑うと夕焼けを帯びた教室のカーテンが風に吹かれて揺れた

「きれいだ」

そう自然に
夕暮れのオレンジが薄めの茶色い目に光って
時が止まる

「衣食住にかかる費用は私持ちボーナスだって用意するだから」

「それでも俺は「それでも私は雪に雪と家族になりたいと思った、今、思った」

雪を1人にさせたかった訳じゃない
彼が歩むこれからを、ちゃんと歩けるように
したい。

私のカバンの中から見える不吉な通知が痛いほど針に見えた