本当は行かないでって言いたかった。 六花が他の男と近づいたり、手を繋いだり、キスしたりするところなんて見たくもないし考えたくもない。 なのに俺は、口から嘘の塊を吐き出した。 「いいんじゃない? 最後の夏休みみたいなもんだし、六花も少しくらい休んでもいいでしょ。普段頑張ってるご褒美だとおもって行ってきたら? 圭斗くんも喜ぶだろうし」 いつから俺は他人の幸せを願える素敵な人間になったんだろう。 あまりの嘘に眩暈がする。