「有、ちょっとくらい待ってろって」 「どーせ大した話してないんだろ? いいじゃん時間の無駄になんだし」 確かにそうだけどさ……。 帰り道の有はいつも少しだけ不機嫌そう。 学校にいる間の可愛さなんてものはこれっぽっちもない。 隣を、頭1つ分下を歩く柔らかい、猫っ毛の茶髪。 一年中袖の長い白カーディガンを着ている美少年は、毎日毎日、塾に行くのを死ぬほど嫌がっているのだ。