「俺なら、もうちょっと上手くやれるよ? 誰にもバレないように」
そう言って、重ねられた唇。
器用に私の上唇だけを奪った日世は、とても満足そうにその形のいい唇に笑みを浮かべていた。
「バッ………っ、誰かに見られたら…」
「誰に?」
見回すと、完璧すぎる犯行現場ができていた。
入り口の扉も窓もすべて閉められ、加えて廊下からは誰の声もしない。
グラウンド側の窓は開いているけれど、厚手のカーテンが引かれているせいで私たちの姿は向こうからは見えない。
完全犯罪、とでもいえば良いだろうか。
私か日世が他人に漏らさなければ、決してバレないような状況だ。



