「もしかして、会議あるって忘れてたの? 鶏頭?」
「ひでーな。さすがに忘れてはねーけど……」
「なによ」
一向に席から立ち上がる気配のないヒナを横目に、教室の壁に貼り付けてある時計を見る。会議の時間まではもう少しある。けどモタモタはしてられない。
「行くよ。遅刻したらまた何か言われる」
「あぁ、うん」
ペンと小さなメモ帳だけを持って。何と戦うわけでもないけど、身軽な方がいい。
「じゃあな、ヒナ。頑張って守ってやれよ」
「んでこんな日に限って余計なことすんだよ……」
珍しく口調の荒れたヒナ。不破島くんの言葉も気にかかる。
守るってなにを。私を? 私は普通科の圧力に負けるつもりは毛頭ないし、何ならヒナのことを守ってやらないとな、なんて思ってる。
「六花、くれぐれも大人しくしててね」
「はぁ? 私が会議中に暴れるとでも?」
「だから、そうやって他の男のこと見上げちゃだめだよって言ってんの」
あとできるだけカーディガンの袖捲っておいてと、無茶を突き付けられる。季節は9月だ。そんなことしたら寒いに決まってる。
「意味わかんない」
「俺の方が意味わかんないんだけど」
放課後の人で溢れかえった廊下に、ヒナのため息がひとつ零れる。
「困った彼女だよ、ほんとに」



