恋泥棒の犯行予告




「ちょっと、怖いんだけど」

「じっとしてないと目の中にペン先入るよ」


お昼ごはんも早々に食べて、今は私のリクエスト通りメイク中。

出来上がりはお楽しみということで、鏡は見せてもらえてない。とりあえず今わかることは、人に顔、特に目の周りをいじられるのは恐怖でしかないってことだ。


「え、無理こわい」

「はいはい終わり。よく我慢しました」


カタリと軽いものが机の上に置かれる音がする。暁奈がいつも使っている手鏡を渡されて覗き込んでみると、そこにはいつもと違う顔をした自分がいた。


「うおお……目が……違う」

「はっきりしてるでしょ。あとチークで血色もよく見えるから健康的な印象も生み出せるし」


新作のテラコッタチークがなんだ、アイシャドウはクリームに限るだなんだ……。暁奈の口はよくわからない呪文を唱え続けている。詳しいことはさっぱりだけど、今の私なら胸を張って会議に参加できる気がする。

メイクをするとこんなにも心が上向きになるんだ。すごい。


「あれ、橘どしたの」


どこからか声がする。少しだけ高い、男の子の声。


「不破島くん、見てよこれ。暁奈にメイクしてもらったの」

「やっぱな。なんか違うと思った」


空いていた私の目の前の席に腰かけ、化けるもんだなぁと感心する不破島くん。普段から女の子のメイクを見ることに慣れてるのか、暁奈とメイクの出来栄えについて話し始めた。