「あの……」
「なに?」
「手首、いたいんだけど……はなしてくれないかな?」
ギリギリと締め付けられる手首。
頭上でまとめられているせいで、こころなしか肩まで痛くなってきた。
「……ほんと、良いザマだね、六花」
ははっと短く笑ったかと思えば、右の鎖骨のあたりに何か柔らかいものが触れた。
ヒナの髪が耳をくすぐり、背筋がぞわりとする。
「いっ……、た、い……」
突然ガブリと皮膚の薄いところを咬まれ、思わず声が漏れた。
ヒナの歯が食い込んでいくにつれて、全身から力が抜けていく。
「んっ……」
間髪いれずにそこを強く吸い上げられれば、もう私はしばらく今日のことを忘れることができなくなる。
それは紅い痕となり、数日は残るだろう。
赤黒くなり、体の中に溶けていくまで存在を主張し続ける、所有印として。
「ちゃんと付いてるといいんだけど」
暗いからわかんないね、と無邪気そうに言った男は、私の手を放してベッドから降りた。
「さ、帰ろう。六花のお母さんには連絡入れておいたから安心して。あと、その痕は親には見せないでね。俺が怒られちゃうから」
伸ばされた手を取り、立ち上がる。
さすがにヒナの服を着て家に帰るのはまずいだろうと思い、ヒナのお母さんからシャツと短パンを借りた。
「五月ちゃん心配してたよ。お父さんともちゃんと話し合ってきな」
ヒナのお母さんに頭をぐしゃぐしゃと撫でられ、また涙がこぼれそうになった。
「ヒナに、ついてきて……ほしい」
「いいよ。日世でよければいくらでも」



