「な……、…」
息をすることもできずにただ体がこわばる。
相手の激しい心臓の音が聞こえるくらい密着されている。
こわい。
こわい。
どうしよう。
こわい、
「り、っか……」
耳に流れ込んできたのは、少し棘のある、それでいて甘い声。
聞きなれたそれに、どうしようもなく安心してしまった。
「っ……うあ…ぁ…っ……ヒ、ナっ……!」
今まで我慢していたものが全て決壊した。
びっくりしたし、こわかったし、死んじゃうのかなって思った。
私をしっかり抱きしめて離さない腕を精いっぱい握ると、彼は大きく息を吐いた。
「六花のお母さんから事情は聴いた。今から俺の家に連れていく」
そういって、少しだけ強引に腕を引かれて、立ち上がれと命じられる。
顔色を窺おうにもあたりが暗すぎてほとんど顔を認識することができない。
有無を言わさないような強い態度が珍しくて、ほんの少しだけ、日世を怖いと思ってしまった。



