初めてあんなに腹が立った。
いつもは同じようなことを言われても黙って聞き流せるのに、今日はそれができなかった。
なんで私だけ。
なんで私の言うことには耳を傾けてすらもくれないの。
何もすごく不安定な道に進もうとしているわけじゃない。
看護師として立派になって、ひとりの人として生きていきたいのに。
「もう疲れた」
簡素なサンダルと制服のなんとアンバランスなことか。
飛び出したはいいものの、特に行くあてもない。
かといって今から何もなかったかのように家に帰ることもしたくない。
(わがままな子どもじゃあるまいし……)
無我夢中で家から離れようと足を進めていたら、いつの間にか、圭斗と花火を見に来た河川敷のところにいた。
あたりに太陽が残した光はない。
今は何時だろう。
スマホも腕時計も、何も持たずに飛び出してきたから時間もわからない。
芝生しゃがみこんで、立てた膝を抱きかかえる。
あーあ。泣きたくないのにな。
とめどなくあふれてくる涙を抑えることができず、膝がどんどん濡れていく。
暗いから誰かに涙を見られることはないけれど、自分のプライドがひとりでに傷ついていった。
──ドサッ、
刹那、背後から誰かが覆いかぶさってきた。



