「じゃあさ、いま有は好きな人はいるの?」 少し、沈黙が流れる。 答えてくれなくてもいいよ、と後付けのように言うと、彼はわずかに口角を上げてこう言った。 「たぶんな。手にいれるためには、まずお前らに幸せになってもらって1回傷つけねーといけないから、俺は今ここにいんの」 ほら、帰ろうぜ、と手を引かれる。 耳の赤みとは裏腹にひんやりとした指先が触れて、またひとつ、彼のことを知れたと嬉しくなった。