「…なに。」
「いやー別に。圭斗くんと何してたのかなぁって」
さっきまでとはうって変わった、真っ黒い、鋭く光った瞳が向けられる。
口許は笑っているのに、その笑顔は温もりを帯びていない。
「…何もかもお見通しなんでしょ? 日世がそういう顔するってことは」
「んー? そうでもないよ」
じゃあどこまで知ってるの、と視線をノートに落としたまま、わざと不機嫌な調子で訊いた。
んーとねぇ、といつになく間延びした話し方で考えるふりをしながら日世が教室に入ってくる。
私の真後ろにある掃除用具入れに背中を預けて、
「六花と圭斗くんが喋ってたのに急に黙り出したとこくらいまでかな」



