俺も有名人になったもんだね、と遠いところを見つめてそう言う。
そして、また無言が私たちを包み込んだ。
言葉を選ぶフリをして、その実、もう会話することを諦めているのかもしれない。
わかるだろ、と言われている気がしてならなかった。
「悪いとは思ってる」
いつもの柔らかい雰囲気なんてこれっぽちもない声音。
前に部活のコーチに叱られている圭斗を見たことがあるけれど、そのときもこんな顔をしていたような気がする。
「別に謝ってほしいわけじゃないんだ。ただ、隠し事みたいにされてたのが、ちょっと悲しかっただけ」
そう、ちょっとだけ。
1時間他の男の膝の上で泣いたくらい、ほんとちょっとだけ。



