教室から人がいなくなるのと、サッカー部が練習を終えるのがほとんど同時だった。

窓の外から元気の良い声が聞こえてくる。

数式を綴っていた手を止めて、それから大きな伸びをする。


「ヒナには連絡入れておくか……」


スマホを起動してメッセージを打ち込む。


『圭斗との別れ話、』


ここまで打ち込んだ時、肩を誰かに掴まれた。

驚いたはずみで、鈍い音を立ててスマホが落ちてしまった。


「あ、ごめん」


声の主は私の足元に落ちたスマホを拾おうと身を屈める。


「触んないで!」


反射的にそう叫んでいた。

まだ心の準備ができていない。

今あのメッセージを見られて圭斗に責め立てられでもしたら、とてもじゃないけれど上手く話を進められる自信がなかった。