「いやぁ、食べた食べたぁ」


「じゃあ帰ろう。今日は帰ったら早速準備があるからね」


「めんどぉ」


「面倒なんて言うな。ひーにゃんに失礼......」



突然言葉を失い、立ち止まる八代先輩。


先輩の視線の先には...。



「黒ちゃん？！」



黒羽くんとカノジョさんがいた。



「お嬢様っていうかお姫様じゃないか。まさか姫ロリだとは...」


「さあやんの方が100倍可愛いじゃぁんっ！」



カノジョさんは全身真っ白のロリータファッションをしていた。


髪型はアイロンでくるくるに巻いてあって桃色の髪が可愛い。


私は顔は良く見えなかったけど、後ろ姿からして可愛い人にちがいない。


あの人はお嬢様で、


私は元お嬢様。


半年前まで同じ状況だったとは思えない、今の私の変貌ぶり。


今は1000円のトップスに3万円のお気に入りだったスカート...。


なんでだろう。


胸が痛い。


チクリじゃなくてズキンズキン痛む。


なんでこんなに痛いの？


私...


あの人に、


桃さんに、


嫉妬してるの？


なんで？


なんで？


なんで？


なんで、なの？



「さあやん？」


「あっ、ごめんごめん。行こっか」



振り返って2人を見た。


仲睦まじく微笑み合っている。


黒羽くんもあんな顔するんだ。


まるで生まれたての子犬を見るような優しい目で桃さんを見ている。


恋...してるんだな。



「ねぇさあやん、夕飯なにぃ？」


「夕飯？夕飯はね、確か...チキンの照り焼きだったと思う」


「やったぁ！チキンっ！チッキン！」


「キッチンみたいじゃないか」



あはは...。


あははは...。


笑えない。


笑えないんだ。


どうしたの、私。


胸だけじゃなくて頭も締め付けられるような痛みが走っていたのだった。