他人の、しかも男子の部屋に入るなんて本当は嫌。


だけどまた今夜もここにいる。


私のお隣さんの黒羽玲央くんの部屋。


何度来てもお菓子の袋が放置されている。



「さてと、協議だ協議だ。さっきおれが寝てる間に紫雄と何してた?」



またしゅうくんにヤキモチ?


はぁ。


ほんと、子供だ。


話す気にもならない。



「おい、答えろ。答えないと押し倒す」


「何言ってるの?黒羽くんはほんと変態だよね。私帰るね」


「おい、待てよ。今のはジョーダンだ」


「私ジョーダンが通じない人なの。お願いだからそういうの止めて」


「ジョーダンが通じないって素直でいいことじゃねえか。おれはそういうやつすっげえ好きだぜ」


「別に黒羽くんに好かれようと嫌われようと私には関係ないけど」



そう。


関係ないのだ。


今考えなくちゃならないのは、しゅうくんへの返事だ。


しゅうくんをどう思っているのか私はよく分からない。


しゅうくんは優しいし、カッコいいし、一緒にいると安心するし、ドキドキもキュンキュンもする。


惹かれているのは確かなんだけれど、踏み込んでいいのか分からない。


学校にもファンが何十人もいるのに私なんかがカノジョになってもいいのかな?


だって寮生とバイトだよ?


普通は有り得ないよね。



「おい」



ほっぺを右手で挟まれ、顔を彼の方に向けさせられる。



「今紫雄のこと考えてただろ?顔で分かるんだよ」



そう言うと彼は手を離し、私の頭に手を乗せた。



「おれが乗せてもキュンとしないんだろ?」



キュン、か...。


確かにしない。



「やっぱり好きなんだな、紫雄のこと。どうせアイツにコクられたんだろ」


「えっ、いや...えっと...」


「図星だな。おれ、意外と鋭いんだよ、そういうの」



まさか、バレてるとは。


もしや私、顔にもろに出ちゃうタイプなのかも。


あわわ...。


それじゃ何も隠し事出来ないじゃん。