「わっ、これ美味しい!」
「それは何?」

「カボチャのグラタンだって。ほら、涼介も食べてみて」


 涼介の口元に同じものを運ぶ。
 美味しいものは、つい共有したくなるのだ。


「本当だ、美味しいね」

 涼介も気に入ってくれたようで嬉しい。


「このミートパイも美味しいよ」
「うそ、食べたい!」

「ほら、どうぞ」


 今度は涼介が気に入ったものを見つけたようで、食べさせてもらった。

 うん、これも美味しい。


「愛香って本当に幸せそうに食べるね」

 涼介に頬を指で撫でられ、少しくすぐったい。
 けれど、これに慣れてしまった私は抵抗するほど嫌な気持ちにはならない。

 むしろ、そのくすぐったさがどこか気持ち良い。


「ちょっと待ってあっっま‼︎」
「二人って日に日に距離感おかしくなってねぇか⁉︎」


 そんな私たちを見て、真田や沙彩に突っ込まれ、周りも納得したように頷いていた。


「……そう、かな?」


 私の中ではこれが当たり前という感覚になってしまったけれど、周りから見たらおかしいようだ。

 慣れとは恐ろしい。


「おかしくないよ、これが今の俺たちの距離感だから。ね、愛佳」

「うん……?」

「いやぜってぇ涼介確信犯だろ‼︎」
「さあ、何のことかわからないかな」


 真田は涼介に対して何やら突っ込んでいたけれど、私は頭の中でクエスチョンマークを浮かべ、二人のやりとりを黙って聞いているだけだった。