「あっ、瀬野見つけた!」

 俯き加減の私より先に、沙彩が涼介を見つけたようで、彼の名前を呼ぶ。


「じゃーん!瀬野の愛しの彼女が可愛い仮装をしてるから見てあげて!」

「ちょ、沙彩……」


 思わず顔を上げると、狼をモチーフにしたカチューシャをつけている涼介の姿があった。

 まるで本当に狼の耳が生えているようで、かっこいいなと思った。


「嫌な予感、的中しちゃったね愛佳」

 まるで「おいで」というように手招きされ、いつもの癖で涼介のそばに寄った。


「私もこんな格好なんて聞いてなくて……」
「いっそのこと愛佳を連れて帰ろうか?」

「それは……さすがに」


 返事を躊躇ってしまうのは、ハロウィンパーティーを楽しみにしている自分がいたからだ。


「俺は大歓迎なのになぁ。じゃあ男子の間で不人気だったお化けのマントでも被る?」

「え、本当に準備されてたの?」
「俺に着せる気満々だったみたい」


 結局、お化けのマントは余っているらしい。


「うん、やっぱり持ってこようか。もし風邪をひいたら大変だろうし、せめて肩に被せよう」

「えっ、あ……」


 涼介は私の返事を聞く前に取りに行ってしまう。


「瀬野、嫉妬してるね?こんな可愛い彼女を誰にも見せたくないって」

「はい⁉︎そんなわけないから……!」


 一部始終を見ていた沙彩にはニヤニヤされてしまったけれど、今の涼介に嫉妬をしている様子は見られなかった。

 しばらくして戻ってきた涼介に、肩から少し大きめのマントを被せてくれたところでハロウィンパーティーが本格的に始まった。