「受験勉強の息抜きにさ、ハロウィンパーティーしようぜ!」


 とある昼休みの教室で、そう提案したのは真田だった。

 その提案に対し、クラスの大半が賛成していたのは、きっと勉強漬けの毎日に嫌気がさしているからだろう。


 私も毎日勉強ばかりで疲れているのが正直なところ。

 自分に甘いというのはわかっているけれど、たまには息抜きも必要だと欲に負けてしまう。


「涼介も行く?」
「愛佳が行くなら俺も行くよ」

「じゃあ決まりで!」


 念のため涼介に確認すると、彼も行くということで参加の意思を真田に伝えに行く。


「おおっ、二人も来てくれるのか!」
「うん。楽しみにしてるね」


 きっとクラスのみんなでわいわい騒ぎ、楽しいパーティーになるだろうなと思うと、嬉しくてつい頬が緩んでしまう。


「……っ、川上さんってほんっとに変わったよな」
「え、なに急に」

「なんか日に日に可愛くなってる気が……ぐえっ!」
「楽しそうだね。俺の彼女を口説いてるの?」

「断じてちげえよ!苦しいからやめてくれ!」


 頬を赤らめる真田の反応に困っていると、涼介が私たちの間に割って入ってくれた。

 涼介は真田の肩に腕をまわしているように見えるが、苦しそうにする真田の様子から、器用に腕を使って軽く首を絞めているように見えなくもない。


「やめなよ涼介、真田が苦しそう」

 私の一言で、涼介は真田から離れた。


「いやぁ助かったぜ川上さん。じゃ、当日はよろしくな二人とも!」


 真田はその隙を狙って逃げるようにその場を去ってしまう。


「真田に何したの?」

「別に何もしてないよ?それよりハロウィンパーティー、楽しみだね」


 爽やかな笑みを浮かべているけれど、今はどこか黒いオーラを感じて少し怖い。

 けれど変に刺激する必要もないと思い、涼介の言葉に対して素直に頷いた。