「思う存分甘えていいんだよ。
俺は何もしないから」

「……嫌」

「たまには愛佳から来て欲しいな。
俺ばっかりだと不満だよ」


だからって、こんな恥ずかしいこと。

嫌だけれど。
約束を守らないのも良くない。


「じゃあ目、閉じて…」


渋々、涼介の言うことを聞く。
目を閉じた彼に顔を寄せ、唇を重ね合わせた。

けれど意地悪な涼介は、そのキスに応えてくれない。


「…っ、なんで…」
「いつも俺がしてることを真似たらいいんだよ」

真似たらいいって、つまり。
一度のキスじゃ許してくれないのだ。


「は、初めてだし…」
「じゃあもう終わり?」

「……それは、嫌」


その先が欲しくて。
もう一度涼介にキスをする。

胸はドキドキしてうるさいし、顔は熱くてたまらないし。
それでもいつもの彼を真似てみるけれど、上手くはいかない。


「やっぱできない…涼介」

限界なんてとっくに超えていて。
視界が涙で歪む中、涼介に助けを求める。


「必死になって、本当に愛佳はかわいいね。
仕方ないから一度だけ見本をしてあげる」

「…んっ」


ようやく涼介からのキス。
受け入れる体勢に変わり、彼の首に腕をまわす。

とびきり甘いキスに今日も酔いしれていた。