「これでもダメなの?」
「うん、足りないね」

「……ケチ。順位も一つだけしか変わらなかっただけなのに」

「逆に愛佳は俺に勝ったらどうしたかったの?」
「……満足するまで甘やかしてもらってた、かも」


涼介を言いなりに、といっても悪いことをしようとは思っていなかった。

ただ意地悪なしに、私が満足するまで甘やかしてもらっていたことだろう。

恥ずかしい思いをせずに、涼介の甘さで満たされたかったのだ。


「かわいいことを考えていたんだね」
「…っ、うるさい」


自分の顔を隠すようにして涼介に抱きつく。
ここまで来てようやく涼介が私を優しく包み込んでくれた。

けれど、まだまだ物足りない。


「ねぇ、涼介」
「どうしたの?」

「頭、撫でて…ほしい」


物足りなさを満たすように、涼介を求める。
普段は絶対に言わないけれど、甘えて欲しいって彼が言うから。

我慢して言葉にするのだ、なんて単なる言い訳に過ぎないかもしれない。


「うん、よくできました」
「…っ」


目を細めて笑い、私を褒める涼介。
本当にズルイ。

優しい涼介に抗おうと思えないのだ。


「やっぱり求められると嬉しいな」


涼介は笑っているけれど、その瞳はどこか危険だ。
まあ彼がこれだけで満足するとは思えない。

もちろん私も満足できるはずがない。
ここまで来たらもっと欲しい。


じっと涼介を見つめるけれど、ニコニコ笑い返されるのみ。

わかっているくせに、タチの悪い。