「涼介」
「どうしたの?」
恐らく彼は待っている。
だからこそ余計に恥ずかしい。
「いつもの…」
「うん?」
「…っ、意地悪」
結局私が折れるしかないようで、大人しく涼介の手を握る。
「たまには甘えられるのもいいね」
なんて、涼介は満足気だ。
それでも手を優しく握り返してくれるため、私も満足している。
普段甘える行為をしない分、今日は思い切って甘えてみても良いかもしれない。
かわいくないと思われて捨てられる可能性もあるのだから、頑張ろうと意気込む。
「それで、どうしてさっきは不安そうな顔をしていたの?」
涼介の家に着き、ソファで寛ぐ私たち。
甘えると意気込んだのは良いものの、いざその状況になれば中々動けない。
そのため涼介との間には距離があった。
せめて『おいで』と呼んでくれたら飛び込めるのだけれど…涼介は何も言ってくれない。
「……笑わない?」
「笑わないよ。むしろ愛佳の不安を共有したい」
「涼介って何でもできるでしょ?だから、涼介より劣ってる私を嫌にならないかなって…」
「たまに愛佳、すごくネガティブになるよね。
俺が嫌いになるなんて絶対にあり得ないのに」
「…本当?」
「むしろ好きになっていく一方だよ」
そのように言ってくれるけれど、いつものように行動で安心させてくれない涼介。
本当に今日は私に甘えさせるつもりたのだ。
恐る恐る涼介に近づいて、彼の肩にもたれかかるけれど。
意地悪な彼はそれで許してくれない。