「じゃあ教え…」
「愛佳、俺が教えるよ」

「えっ?」
「だからそこ退いて。席を交換しよう」


作り笑いの涼介は、少しお怒りの様子。
もしかして私が寛太に勉強を教えることが気に入らないのだろうか。


「俺は愛佳先輩に教えて欲しいです!」
「大丈夫。俺、教え方が上手いって評判だから」

「何か瀬野先輩、怒ってません?」
「悪びれもせず俺たちの邪魔をしてくるからね」


珍しい、涼介がこんなにも人に敵意を向けるだなんて。


「でも瀬野先輩がふたりでいる時にって…」
「君、空気読めないの?」


裏の涼介が出ている気がするため、慌ててふたりの間に入ることにした。


「ほ、ほら!
早く教科書開いて寛太」

「あ、はい…」

「涼介も自分の勉強して。
私に抜かされてもいいの?」


涼介が寛太の勉強を教えるだなんて、不安でしかない。

こうなったら私が最後まで責任を持つことにする。


「……本当に愛佳ってわかってないよね、俺のこと」


その対応を不服に思った涼介に後で色々されたのは、また別の話だった。