「今回は絶対に勝ってやるんだから!」


学年1位だと調子に乗っていると、そのうち他の者に抜かされるだろう。

そのため私も抜かしてやるという意気込みでテストに挑むことにした。



「へぇ、じゃあ俺が勝ったら愛佳は何をしてくれる?」
「……はい?」

「条件ありの方が、もっとやる気が出ると思わない?」


その満面の笑み、嫌な予感しかしない。
けれどここで逃げる方が嫌である。


「じゃあどんな条件がいいのよ」
「うーん、例えば“一日中相手の言う事を聞く”とか」

「……無理」


絶対に無理。
そんなのもし私が負けたら、恥ずかしい思いをさせられるに違いない。


「じゃあこれにしよう」
「ちょっと話聞いて…」

「逆に愛佳が勝てば俺を言いなりにできるんだよ」


いつもいつも私の上をいく涼介を言いなりにできる。
確かにそれは、またとない機会だ。


「……っ、わかった。
絶対に勝ってやる」

「決まりだね」


ニコニコと嬉しそうに笑う涼介。
もちろん勝つ気でいるのだろう。

こうなったら徹底的にテスト対策をしようと思ったけれど───


「あ、愛佳先輩!」

静かな図書室に、明るく大きめの声が私の名前を呼んだ。

確認しなくてもその相手が誰なのかなんて、すぐにわかる。


「寛太」


一時期は告白されて気まずくなっていたけれど、今では普通に話せる関係に戻っていた。

といっても寛太は私に好意を全開で向けてくるため、色々と困っているのだが。