「だって大学生になったら涼介とバラバラになる…」
「今それ言う?キスしたくなるよ」

「なっ…」


テストが近づくと、放課後の教室や図書室は混む、
今もいくつかの生徒が勉強しにきているというのに。

いくら周りには聞こえない小さな声とはいえ、よくそんなことを言えるものだ。



「愛佳、日に日に素直さが増していくから大変だよ」
「な、何よ…その嫌そうな言い方」


別に無意識というか。
最近はすぐ言葉にしてしまう気がするけれど。

そこまで嫌そうにしなくてもいいではないか。


「我慢する俺の身にもなってほしいな」
「何が我慢だ。じゃあ厳しく当られたいの?」

「俺はどんな愛佳でも大歓迎だよ」
「馬鹿みたい」


結局どうして欲しいのかわからない。
もちろん涼介の言う通りにはならないけれど。


「素直な発言する場を考えようねって話だよ。
いいの?ここでキスして」

「…っ、ダメに決まってるでしょ」
「じゃあいつもの場所に行く?」


“いつもの場所”とは相談室のこと。
けれどそこに行けば、勉強に集中できなくなるのが目に見えるため、首を横に振る。


「えー、残念だな…」

「私は真剣なんだからね!
何でこんな奴が学年1位なのよ」


涼介は余裕そうにしている上に、いつもの調子で私を誘ってくるのだから悔しい。