一体涼介はどのように答えて───



「その誘いは断らせてもらうよ。区切りがついたら、今の世界からも足を洗うつもりなんだ」

「……そっか、それは残念だな。でも考えが変わったら、いつでも言ってね。俺は大歓迎だから」


それが本当の最後だった。
神田と未央ちゃんは家を後にし、帰っていった。


「一時はどうなるかと思ったけど、上手くいって良かったね」


家のドアを閉めた後、ようやく涼介は息を吐いた。
彼も少しは緊張していたのだろうか。

けれどそれ以上に───


「じゃあ今からどうし…って、愛佳?」
「……っ、なに」

「何って、どうして泣いてるの?
神田拓哉がそれほど怖かった?」


涼介は私の異変にすぐ気がついた。
急に泣き出してしまった私のそばに駆け寄り、心配そうに見つめられる。


「……違う」

違う、そうじゃない。
確かに怖かったけれど、泣いているのは涼介が原因だ。


「あんたがっ…、断ったから」
「断る?」

「組に入ること、断ったから…安心して」


涼介に迷いはなかった。
本当に足を洗うつもりなのだ。

その姿に安心して、思わず泣いてしまった私も私だ。
涼介を困らせていることだろう。


「俺が組に入ると思ったの?」
「もう、危険な目に遭ってほしくないの…」


いつも私を守ろうとして。

自分の身は簡単に投げ出すのだ、もっと自分のことも大切にしてほしい。


「本当にかわいいこと言うね、愛佳は。大丈夫だよ、俺のやるべきことを果たしたら終わろうと思っているから」

「……うん、絶対」

「約束するよ。
だから愛佳も俺のそばから離れないでね」

「当たり前でしょ」


涼介は私を優しく包み込んでくれた。
思わず泣いてしまったけれど、落ち着いていくのがわかる。


「あーあ、今から愛佳を好き勝手してやろうと思ってたのに。そんなかわいいこと言われたら、手を出しにくいな」

「……まだこのままがいい」

「ほら、またそんなこと言って。
どれだけ俺を我慢させるの?」


なんて言いながらも、いつも涼介は私に合わせてくれる。

そんな涼介のことを、私は好きになっていく一方であった。