「涼介は寝ないの?」


あまりにも予想外の展開が続き、さすがの俺も理解に苦しんだ。


まず愛佳が俺のためにと連れてきてくれた服の店で、女の従業員に腹を立てた彼女が俺を残して店を出て行ったこと。


その後、女の従業員は気持ち悪いほどアプローチしてきたのだが、正直そんなことはどうでも良かった。

早く買い物を終わらせて、愛佳の元へ行きたかったのだ。


買い物を終えると、まずは愛佳に連絡しようと思った。


次に起きた予想外の展開がこれだ。

先に愛佳からメッセージが来ていたかと思うと、【本当にごめん、事情があって女の子と一緒に私の家に向かってる。だから涼介も帰ってきて】とのことだった。


訳がわからなかった。
放課後デートだとあれほど喜んでいた愛佳が、俺を置いて帰ったのだ。


しかも女と一緒に家へ向かっている?
相手の名前を述べず、“友達”とも言わない。

まさか知らない女を家に向かっているというのだろうか。


さすがにそれはないだろうと思っていたが、その女とは天帝の総長の女である白野未央だった。

俺は思考を放棄したくなった。


『こんばんは、仁蘭の瀬野涼介くんだよね?俺の彼女がそこにいると思うんだけど…連れ去ったってことでいいかな。これは宣戦布告?』


天帝の総長であり、神田組の若頭───

神田拓哉の声には静かな怒りが含まれていた。
言葉にできないほどの圧が神田にはあった。