初対面とはいえ、彼女なら安心して家に上げられるはずだと───



「……え」


だが私の予想は見事に外れた。
涼介は未央ちゃんを見るなり、目を見開いてピタリと固まってしまったのだ。


「涼介…?」
「どうして、白野未央がここにいるの?」

「えっ、どうして未央ちゃんの名前を知って…」


まさかの事態に頭が追いつかない。
どうして涼介が未央ちゃんのことを知っているのだ。


「……愛佳」
「は、はい…!」

「彼女と会ったのは本当に偶然?」

「もちろん…!
たまたま男に絡まれているところを助けて…」

「いや、どっちにしろ緊急事態だなこれは」


涼介は冷静なように見えて、どこか焦っているようにも思えた。

そんな彼はゆっくりと未央ちゃんに近づき、彼女のそばで腰を下ろす。


「あ、えっと…」

もちろん涼介のことを知らない彼女は、自分の名前を言い当てたのを見て戸惑っていた。


「君は白野未央。それから君の男の名前は神田拓哉で合ってるよね?」

「…っ!?」


涼介の言葉に、目を見開いた未央ちゃん。
どうやら彼氏の名前も知っていたようで。


「ちょっと涼介、どういうこと?
どうしてふたりの名前を…」

「…天帝」
「えっ?」

「この子の男が天帝の総長であり、神田組の若頭だよ。この間話したこと、覚えてない?」


ドクンと、心臓が大きな音を立てた。
涼介の言葉を聞いてようやく思い出した。

初めて未央ちゃんの名前を聞いた時。
聞き覚えがあったのは、やはり間違いではなかったのだ。


「う、そ…」

それに未央ちゃんの彼氏である、雰囲気からして危険だったあの男が───


天帝の総長であり、神田組の若頭…?