「ううん、気にしないで。でもこれからどうしようか。家に帰る?」
ここは素直に家へ帰すのが正解だろうと思ったけれど、彼女は首を横に振った。
「きっと、家に来るから…」
「さっきの男が?」
「今は、会いたくなくて…」
今は?
ということは、やっぱり男と何かしら関係があったのか。
とはいえ初対面の私に事情を話せなど言いづらい。
「じゃあ他に行く当てはある?
友達の家とか!」
「……迷惑、かけてしまうから…」
こんなにもかわいい顔をして、すごく控えめな子らしい。
確かに見た目からして大人しそうだけれど。
「じゃあ私の家に来る?」
「……え」
さすがに今の彼女を野放しにはしておけない。
こんなかわいい子、またすぐ狙われてしまうはずだ。
悩んだ末の誘いだったけれど、さすが私が女だとしても、初対面の人の家に上がるのは抵抗があるだろう。
ただ何もせずに終わるのは嫌だったため、一応聞いてみることにした。
「で、でも…そんなの迷惑で…」
「迷惑じゃないよ。今の貴女を放っておく方が心配」
先ほどの男を見ただけ、恐怖心が芽生えたのだ。
ただものではないということは私でもわかる。
その男に彼女が捕まってしまえば…なんて、考えただけでも恐ろしい。