「彼氏さんの服をお探しですか?」


すると早速、食い気味に女の従業員が話しかけてきた。

私の方を一切向かず、涼介に見惚れている様子になんだか不服だ。


「彼氏さん、すごくイケメンなんで何でも似合いそうですね〜。モデルでもやっているんですか?」

「そんなことないですよ」

「彼女さんもすごく綺麗ですね、羨ましいです。そうだ、せっかくだし彼女さんには内緒で今度のデート用にコーディネートしますか?私、そういうの得意なんですよ」


全く私に視線を向けない従業員は、恐らく涼介目当てなのだろう。

ロクに私を見ていないくせに、何が綺麗だ。
さらには私を涼介から遠ざけようとしている。


「いえ、大丈夫です。
彼女と一緒に選びにきたんで」

「ここは私のセンスに任せてください!
さらにイケメンにしちゃいますよ」


涼介も拒否しているというのに、従業員はしつこい。
見ている私がだんだんとイライラしてきた。


「ほら、彼女さんも見たいですよね?
とびきりカッコいい彼氏さん!」

なんて、有無を言わせぬ圧を感じた。




「そうですね、せっかくだしお願いします。私は適当にその辺歩いてるから、終わったら連絡して」

「えっ…愛佳?」


ムキになっているのはわかっているけれど、喧嘩を売るような醜いことはしたくない。

ここは折れるフリをして、私は店を後にする。


最後に見たのは困った顔をした涼介の姿で、早速後悔に襲われる。

本当にあの従業員といい感じになったらどうしよう…なんて、不安にすら襲われた。


だって私、本当にかわいくない。
素直に嫌だと言えばいいものの。