「どういうことだ…?」

痺れを切らした響くんが、ふたりに説明を求める。
私も説明をしてほしいと思っていたところだ。


「本当は瀬野くんの方が得意なんだ、情報収集とかネット関係全部。それなのに瀬野くんは任せてくれて…」

「集中力は翼の方が高いし、これは翼が適任だと思う。これからも俺は翼に任せたいな」

「瀬野くんがそう言うなら僕は従うよ。
いつかは超えるんだ」


尊敬の眼差しを涼介に向ける翼くん。
このような翼くんを私は見たことがない。


「……本当にあんたって怖い」

何でもできる涼介が、そろそろ怖くなってきた。
弱点というものはないのか。


「怖いなんて言わないで?」
「怖いわよ、完璧すぎて」

ここまで完璧人間となると、さすがの私も恐れて当然だ。


「えー、悲しいなぁ…」
「そんな顔してないくせに」

何が悲しいだ。
その言葉と表情が完全に一致しない。



「それより大丈夫なの?
天帝ってところ。ヤクザと繋がってるんでしょ?」

「んー、そうなんだけど…何か気が合いそうだなって」
「はい?」

「一度会ってみないとわからないけどね」


そんな余裕、どこから出てくるのだ。
相手の族は相当危険な気がしてならないというのに。


「まあ愛佳を狙おうものなら、俺もやり返すけどね」

「あっ、それはダメだから!
本当に連れ去られたら不安で怖いの」

「もちろん先手は打たないつもり。
相手次第かな」


呑気なこと言って、また私を抱きしめてくる。
もっと涼介に緊張感というものはないのか。

先ほどまであったはずなのに、今ではもう緊張感が解けていた。


「しばらくは様子見だね」

まだみんな驚きを隠し切れていない中で、涼介と翼くんだけが笑みを浮かべていた。