無事、とは言えないけれど。
体育祭が終え、一週間ほどが経った。

あれから寛太自身も私に話しかけて来ようとせず、涼介の言葉が決定打となり落ち着いたかと思っていた矢先───


事件は起きた。



「愛佳先輩!」
「え…」

何と昼休みに寛太が教室に乗り込んできたのだ。
まさかの出来事に、頭が真っ白になった。


「あの、すみませんでした!」

そして突然頭を深々と下げられ、謝られてしまう。
理由を説明しないせいで、私が何かしたのかと周りから誤解されそうだからやめてほしい。


「ど、どうしたの?急に…」

「あれからずっと考えてたんです。
そしたら俺、やっと自分の過ちに気がついて」

「過ち?」
「はい!やっぱり男なら正々堂々と勝負ですよね!」


待って、嫌な予感どころではない。
もはや危機感を抱いた私は、慌てて彼を止めようとしたけれど。


「あ、瀬野先輩!
そこにいましたか!」


寛太は止まることを知らず、一直線に涼介の元へ行ってしまう。

教室には嫌な沈黙が流れ、誰も口を開こうとはしない。