「ねぇ~良美…聞いた?」
入口の席からショウコが
聞いてきた。
金髪のカーリーヘヤー
一重の瞼に真っ青なシャドー

「へ?何を?」

「大晦日さぁ~第二埠頭
11時だってさ」

「行くだろ?」
とショウコの前の席から
奈津美が聞いてくる。
『売り』をしてるって
評判がたつほど、
いつも キメキメで
財布も万札がぎっちり。
不良というより
水商売のお姉ちゃんって感じ。

「大晦日なぁ~寒いし…
まだ…わかんない」
あいまいに答える。

「良美ったら…最近付き合い悪いしさ…
聡と付き合ってから、何か…真面目っていうか
つまんないよね…」
ショウコが金色の毛をクリクリしながら
ボソッと投げかける。

「そうそう…この前の
呉服町の件だって…
いつもの良美らしくないっていうか…
来るでしょ…普通」
今日はからし色のスーツを
着た奈津美が言う。

前だったらバイトなんていい加減で
いつも ここに溜まってたし何かヤバイ事があれば
ここの電話が、鳴り出して誰かのバイクのけつに乗っかってかけつけた。
呉服町の件っていうのは
数週間前の静岡での喧嘩の一件だ。
仲間が何人も 補導・逮捕された。

「前なら真っ先に行ったはずじゃん?
そうそう集会にも来ないって
皆言ってたよ。
ホント変わったよね…良美」

「私のどこが変わったんだよ?
別に走るのも喧嘩も
飽きただけじゃん。
聡には 全然関係ないつーの」
コーヒーカップから視線を上げて二人を睨む。

本当は…ショウコ逹が言うように確かに少しづつ変わっているのかもしれない。
誰かのバイクのけつに乗って暴走に行くのも
特攻服着込んで 木刀振り回して野郎と一緒に喧嘩するのにもやる気がわかない。
まるで男のコみたいな
短髪も今は少し伸ばしている。