「お、おおきに!なんとお礼を申したらええか…」
ぺこぺこと頭を下げる未だ座ったままの女性をそっと立ち上がらせる。
改めてしっかりと女性の顔を見るととても整っていて美しい人だった。
歳は20歳くらいだろうか…
(笑ったら、綺麗だろうなぁ…)
「では、一つだけお願いしてもいいですか?」
「は、はい。私に出来ることでしたら…」
「貴女のお名前を教えてください。」
「へ、名前、ですか?」
女性はぽかんとした顔でこちらを見ている。
「はい。あ、先に名乗らないと失礼でしたか!?」
「い、いいえ!そんな…。そんな事でよろしいのですか?」
「ええ。貴方の名前が知りたいです!」
きらきらとした目で自分より少し背の高い女性を見つめる。
やがて、女性はくすりと笑って言った。
「あんさん、変わってはりますなぁ。明里、と申します。助けていただいてほんまおおきに。」
ころころと鈴を転がしたような声の心地いい。
(わぁ…やっぱり綺麗…)
「明里さん、とっても綺麗で素敵な名前ですね。私はさくら蝶と言います。」
「蝶はん、えぇ名前やなぁ。」
また、ころころと笑う明里さん。
(あ、そうだ。折角友達になったんだからこれだけは聞いておかなきゃ。)
いつ友達になったのかと疑問に思った人もいるだろうが蝶にとっては名乗りあったら友達なのだ。
何とも素敵な頭である。
「ありがとうございます!明里さん、ひとつ聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
「はい、なんでもどうぞ。」
(よし。これだけは聞いとかないと…)
「今って何年の何月でここはどこでしたっけ?」
(もう覚悟してるけど、一応ね…)
一瞬ぽかんとした顔をした明里さんだったけどそろそろ蝶のペースにも慣れてきたのだろう。
持ち直して、
「今は文久3年の4月。ここは京の都どす。」
と、答えた。
(や、やっぱりぃぃぃぃぃい!!!!)
