「ねえ 佳宏 私のどこが良かったの?」

ずっと 聞きたかったことを、美咲は 思い切って聞いてみた。
 

「美咲、人のせいにしないから。どんなことも 自分で消化して 自分に責任が持てる子だから。」

佳宏は 少し照れながら答えた。


美咲は驚いて 佳宏の顔を見つめる。

美咲よりも 美咲のことをわかっている。

衝撃的な感動に包まれて。
 


「うそ。私、そんなに立派じゃないよ。いつも佳宏に 八つ当たりしているし。」

美咲は小さく答える。
 
「それでいいの。俺には甘えて。でも美咲が良い子なの、俺はわかっているから。」

佳宏の優しい言葉に 美咲の胸は熱くなって 涙が溢れてしまう。

顔を覆って泣き出す美咲。
 


「美咲、俺の前でしか 泣かないから。いいよ、もっと泣いて。」


佳宏は、ダイニングの椅子を立って 美咲を抱き締める。


美咲は 声を出して 泣きじゃくってしまう。
 


「佳宏のバカ。佳宏がそんな事言うから。」

泣きながら 佳宏の胸で言う美咲。
 


「いいよ、わかったから。ね、美咲は良い子だから。」


佳宏は ずっと美咲の髪を、優しく撫で続けてくれた。