職場で見ていたまま、佳宏は 穏やかで優しい性格だった。

美咲は 佳宏の前では、安心して 素直な自分でいられた。


一緒に過ごす 甘く温かな時間は、佳宏と美咲を 強く結びつけていった。
 


街が クリスマスムードで 賑わい始めた頃、佳宏は美咲に、
 
「そろそろ、部屋探ししよう。」

と言った。二人が付き合い始めて 2ヶ月が過ぎていた。


佳宏は ほとんど 美咲の部屋で 過ごすようになっていた。
 

「えっ。」

美咲は 驚いて佳宏を見つめる。
 

「一緒に住む部屋、探そう。美咲、結婚しよう。」

佳宏は 照れた顔で言う。
 

「私?私に 言っているの?」

美咲の 的外れな返事に 佳宏は ケラケラ笑う。
 
「美咲しかいないでしょう。」と言って。
 

「ありがとう。嬉しい。」

美咲は はにかんで俯く。


佳宏と送る これからの人生を、美咲は 簡単に想像できる。

達也や聡との生活は、全く 思い描けなかったけれど。
 


「運命の人って、本当にいるんだね。」

美咲は 少し頬を染めて、佳宏に言う。
 
「何、それ?」

佳宏は 笑顔で聞く。
 


「前に、麻有子が言っていたの。運命の人に出会うと 何も迷わないって。」

美咲は 恥ずかしそうに答えた。
 

「俺、美咲を一目見た時から そう思っていたよ。」

佳宏は 得意気に 美咲を見つめた。
 
「うそでしょう。」

美咲が驚いて言うと
 


「だから 待っていても 不安にならなかったよ。絶対、美咲と 結婚する運命だって 思っていたからね。」


佳宏の言葉に 美咲は 涙が溢れてしまう。

しゃくり上げる美咲を抱きしめて
 
「泣き虫だな。気が強いくせに。」

と佳宏は言った。
 

「意地悪。佳宏なんか嫌い。」

泣きながら美咲が言うと、
 


「ほらね。」


と佳宏は笑った。