「私の中で、横山君は 通過点だったの。この前みたいに 時々会うなら懐かしいけど。結婚までは 考えられなくて。」


美咲は、智くんと麻有子の顔を 交互に見ながら言う。
 
「美咲、もう答え出しているじゃない。悩んでいないでしょう。」

と麻有子は微笑む。
 

「だから。それでいいのか、麻有子に 確認したかったの。」

美咲が言うと、智くんはまた笑った。
 

「答え合せね。」と言って。
 


「だいたい 私 今更 新潟に帰るなんて嫌なの。結婚して新潟で生活することも。何のために頑張って勉強したのか わからないじゃない。」

美咲は強く言う。
 
「もし横山君が好きなら 美咲 全部捨てて 新潟に帰れるでしょう。達ちゃんの時も 美咲、捨てられなかったじゃない 今の生活。」


麻有子に言われて、美咲は思い出す。

達也にプロポーズされた時も、美咲は迷った。
 


「そこまで思うほどの 生活でもないんだけどね。」

と苦笑する美咲。
 
「俺も麻有ちゃんも 多分 今の美咲ちゃんと同じだったよ。出会うまでは。」

智くんは 優しく言ってくれる。
 
「そうね。他の人とだったら 今の自分には なれなかったと思う。」

と麻有子が続けた。
 


「仕方ない、一生独身を覚悟するか。」


美咲は吹っ切れた笑顔で言う。
 
「美咲、大げさ。」


と麻有子は笑った。