「美咲、ごめんね。絵里ちゃんに お乳あげてくるね。」

むずがる絵里加ちゃんを、智くんから抱き取って 麻有子は別の部屋に行く。
 


「絵里加、本当に可愛くて。絵里加の為なら何でもできるし。どんなに疲れていても 絵里加の顔を見ると、元気になれるよ。俺、子供好きじゃなかったんだけど。俺と麻有ちゃんの子供だから。」

麻有子を 目で追いながら、智くんが言う。
 

「麻有子見ていると、わかります。どんどん綺麗になっていくから。愛ってすごいですね。」

美咲が言うと、智くんは また心地よく笑った。
 

「美咲ちゃん、自分でわかっているんでしょう。無理に 自分を抑えること、ないと思うよ。」

智くんは、美咲に優しく言う。
 
「でも私、もう年だし。結婚を考えたら、妥協も必要ですよね。」

美咲がぽつんと言う。



「そうかな。妥協してまで 結婚する必要ってあるのかな。それって 誰の為の妥協?」

智くんの言葉に、美咲はハッとする。
 

「そんな風に 考えたことなかった。」

美咲が言うと、
 


「俺、時々考えるんだ。もし麻有ちゃんと出会えなくて 別の人と 妥協して結婚したらって。そうしたら 子供を こんなに可愛いって思えるのかな、とか。」

智くんの話しに引き込まれて、美咲が真剣に聞いていると、
 

「絵里ちゃん、眠ったわ。」

と言って、麻有子は 一人で戻ってきた。