「ねえ、美咲。新潟に帰る気はないの?」

ふいに聡は聞く。
 
「そうね。帰る理由が ないでしょう。」

少し俯いて 美咲が答えると、
 


「俺じゃ駄目かな。帰る理由には ならないかな?」

聡は 美咲を真っ直ぐに見つめた。

美咲は、聡の言葉の意図がわからず、
 
「えっ。」と聞き返す。
 


「美咲、帰って来て。俺と結婚しようよ。」

聡の言葉に 美咲は驚いて、何も言えない。
 


「本気で言っているの?」

やっと美咲が聞くと、
 
「当たり前だろう。」

と聡は少し笑った。
 

「私達、付き合ってもいないのよ。」

驚きで美咲の声は大きくなる。
 
「でもお互い、よく知っているじゃない。」

聡の声も少し大きくなる。
 

「それは 子供の頃じゃない。横山君 今の私のこと 何も知らないでしょう。」

甘い話しなのに、まるで言い合いをしているような二人。



美咲はおかしくなってしまう。
 

「どうしたの。」

急に笑い出した美咲に 聡が聞く。
 
「だって。告白してもらって 私、怒っているから。」

美咲が 笑いながら答えると、
 
「本当だよ。美咲、ひどいよ。」

と聡も笑った。


「俺、成人式から 美咲のこと忘れられなくて。その後も 何人かと付き合ったけど、美咲とは違うんだ。昨日会って、わかったから。やっぱり美咲がいいって。」

途切れ途切れに言う 聡の言葉は、美咲の胸を 甘く満たす。
 

「ありがとう。でも急過ぎて。ゆっくり考えさせて。」

美咲はやっと答える。


聡は 美咲の隣に来て、美咲を抱きしめた。
 
「これから付き合おう。俺、美咲に会いに来るから。」

と言って 美咲の唇を塞いだ。