仕事は一般職だったので、美咲は無難にこなしていく。


大手企業は 待遇が良い。

入社して2年目になると 収入も増えた。


東京で 不自由なく一人暮らしができるほどに。
 


「ねえ、麻有子。結婚とか 考えている?」

隣の課に配属になった麻有子とは いつも一緒にランチをしていた。

食事の後に 美咲が聞くと、
 
「うーん。いつかはしたいけど。」

麻有子は曖昧に笑った。
 


「麻有子、美人なのに。彼、欲しくないの?」

麻有子は 男性に媚びない。

いつも毅然としていて、取りつく島がない。

女子社員の中には、仕事そっちのけで 結婚相手を探しているような子もいるのに。
 

「えー。好きって思える人がいないの。」

麻有子は おっとりと答えた。
 
「美咲は?美咲こそ、どうして誰とも付き合わないの?」

と美咲に聞く。


美咲もまた、好きな人ができなかった。

大学生の頃、付き合った彼にも 強い思いを抱けなかった。


まわりに流されて交際しても、どこか醒めている自分を感じてしまう。

美咲が そのことを 麻有子に話すと、
 


「私も全く同じ。だんだん面倒になっちゃうの。」

麻有子は 驚いた声を出す。
 
「どこか欠落しているのかな。」


美咲が言うと 麻有子も不安そうに頷いた。