海岸線の国道を走りながら、聡は 路肩の避難地帯に 車を停めた。
 
「今年は 雪が少ないね。」

聡の方を向いて 美咲は言う。
 
「うん。東京って雪降らないの?」

聡も美咲の方を向く。
 
「降っても 年に1、2回かな。でも、大変だよ。みんな 雪に慣れていないから。」

美咲は明るく言う。
 

「俺昔さ、本城に 勉強勝てないこと すごく悔しかったんだ。」

聡がポツンと言う。
 
「えー。全然 そんな風に 見えなかったよ。横山君、いつも明るくて 人気者だったし。実は私も、憧れていたんだよ。」

美咲は 少しおどけて言う。
 
「井の中の蛙 だったから。狭い世界で いい気になって。調子に乗っていただけだよ。」

聡の言葉は、美咲の胸に 切なく響いた。
 

「悲しいこと言わないでよ。横山君は 私の初恋なんだから。」

美咲が笑いながら言うと、聡はふいに 美咲を抱き寄せた。

そして 驚く美咲の唇を塞ぐ。
 


長いキスの後、聡は
 
「もう少し 美咲と一緒にいたい。いい?」

と美咲に言った。


美咲が ぎこちない笑顔で頷くと、聡は 車を発進させた。
 
その夜、聡に抱かれた美咲。



初めての体験だった。