美咲が育った街では、個性を認めてくれない。

他人と違う所があると 引け目を感じてしまう。


まわりと浮かないように 人と同じことをして暮らしている。

無理をして。

やりたいことを我慢して。
 


美咲の姉、彩美は 美人で目立っていた。

彩美が中学生の時、泣きながら母に
 
「何で 私の髪 こんなに茶色いの。」

と言っていたことがある。
 
「何でって 生まれつきだから 仕方ないでしょう。」

と母が答えると
 
「もう嫌だ。真っ黒に染めて。」と言う。
 
「誰かに、何か言われたの?」

母が彩美に聞くと、


「クラスのみんなが 色々言っているの。」

と涙声で答えた。
 
「彩美も美咲も、生まれつき 髪の毛が赤いんだよ。お母さんが 先生に言ってあげるよ。」

母は困った声で言う。
 

「いいよ。そんなことしたら 余計に目立つから。」

彩美は 膨れた声で言う。


そして翌日、ずっと伸ばしていた 自慢の髪を 短く切ってしまった。

サラサラで艶のある 綺麗な髪だったのに。