軽井沢に似合う、おしゃれな外観と 余裕のある間取り。

智之の提案で、両親と美奈子達の 想像を超えた贅沢な家。
 

「子供が増えて、すぐに狭くなるから。」

と智之は笑顔で言う。


頻繁に 軽井沢を訪れる麻有子達。

その度、みんなで別荘に集まる。
 


「私とお姉ちゃん、すっと 一緒の部屋だったのよ。贅沢だわ。」

美奈子は、まだ見ぬ 自分の子供を思い言うと、
 
「そうそう。2段ベッドで 寝ていたんだよね。」

と麻有子も懐かしそうに笑う。
 

「じゃんけんで勝って、私が上の段で。でも寝てみたら、頭はぶつかるし。下の方が良かったんだよね。」

美奈子も 昔を思い出しながら言う。
 

「美奈ちゃん、はしごから 落ちたことあったよね。」
 
「あった、あった。朝、寝ぼけていて。」

笑顔で話しているうちに、美奈子の目に 涙が浮かんでくる。
 


「お姉ちゃん、いつも一緒にいてくれたよね。」

美奈子が そっと言うと、
 
「私、勉強ばかりしていて。全然、良いお姉ちゃんじゃなかったけど。」

麻有子も涙汲んで言う。
 

「二人とも、泣き虫だな。」

そう言って、智之は そっと麻有子の肩に手を掛けた。
 


「何か、結婚する時って 色々思い出すの。私、自分の時も そうだったわ。」

と麻有子は 指で涙を拭いながら言う。
 

「私、何も変わらないのに。おかしいね。」

美奈子は 泣き笑いのような顔をする。
 

「変わるじゃない、名字が。これからは 小島さんになるんだよ。」

智之が優しく言った。


美奈子が 和哉の顔を見ると、嬉しそうに微笑んでいる。


ふいに 熱い思いが込み上げて、美奈子は 涙が溢れてしまう。


顔を伏せる美奈子の肩を、優しく撫でてくれたのは、和哉ではなく麻有子だった。