「美奈ちゃんが和君に出会えて、本当に良かった。」

麻有子の言葉に、
 
「お姉ちゃん。」

と言って美奈子は涙汲む。
 

「私、幸過ぎて。どんな風に 恩返しすればいいのかわからないくらい。」

と声を詰まらせる美奈子に、
 

「そう思ったら、和哉君に優しくすることだね。」

と父は言う。
 
「えっ。いいです、俺は。今くらい 強い美奈子の方が。」

和哉が戸惑った顔で言い、みんなは 声を上げて笑う。
 

「もう。和哉。」

涙を溜めて、和哉を睨む美奈子。
 


今までだって、自分を 不幸だと思ったことはないけれど。

美奈子は 自分を、怖い程 幸せだと思う。

みんなが 美奈子を 大切に思ってくれる。



今まで、思うままに生きて。


これからも、同じように 自由に生きられる。
 


「美奈ちゃんが、優しい子だからよ。」


と麻有子が言った時、美奈子は 顔を覆って泣き出した。