「土地が広いから、余裕のある 家ができますよ。」


工務店の設計士は、笑顔で言う。
 

「いやいや。狭くていいよ。ママも美奈子も掃除嫌いなんだから。」

と父は笑う。
 
「パパができるじゃない。もう 仕事ないんだから。」

と母に言われて、父は目を見張る。
 


両親と美奈子達に任せると、遠慮して 動かないことを 智之は知っている。

だから無理やり 工務店と顔合わせをした。

両親も美奈子達も、智之の思いやりに 感動していた。



今後の予定を 大まかに決めて、工務店の人が帰ると、和哉は、
 

「お兄さん、お姉さん。本当にありがとうございます。」


と深々と頭を下げた。

そして、
 
「俺、家賃も住宅ローンもないから。お父さん達と、余裕のある生活ができます。」

と続けた。

和哉は、父がお店を閉めても 生活の心配は しなくていいと 智之達に伝えたかったのだろう。
 

「和君、ありがとう。私達 本当に、和君には感謝しているの。」


麻有子は優しく言う。
 
「そんな。感謝するのは俺達です。」

和哉は驚いた顔をする。


麻有子は 静かに首を振って 智之と見つめ合う。